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特殊教育学会 自主シンポジウムの報告1

10月16日〜18日の三日間,大型の台風が日本列島を縦断しようとしている最中,名古屋国際会議場で日本特殊教育学会第55回大会が行われました。 その初日,ICF-CY Japan Networkのメンバーがかかわり,『ICFと合理的配慮と特別支援教育(5)』をテーマにした自主シンポジウムが行われました。 企画者・司会者:徳永亜希雄(横浜国立大学) 話題提供者:徳永亜希雄(横浜国立大学) 隈田原聡(宮崎県立児湯るぴなす支援学校) 西村修一(前・栃木県立岡本特別支援学校) 逵直美(東京都立光明学園) 堺裕(帝京大学) 指定討論者:齊藤博之(山形県立ゆきわり養護学校) 〔企画趣旨〕 ICF(国際生活機能分類)は,WHO国際分類ファミリーネットワーク内において,障害者の権利条約との関連でも議論されてきました。同条約のキーワードの一つが合理的配慮です。  我が国の教育では,中央教育審議会初等中等教育分科会報告(2012)において,合理的配慮の定義や具体的な観点が例示され,また,障害の状態等に応じた合理的配慮を決定する上で,ICFを活用することが考えられると述べられました。しかし,その後,具体的な実践レベルでの検討が十分にされていないことを踏まえ,本テーマによるシンポジウムにて議論を重ねてきました。今回はその5回目となります。  これまでの議論で確かめられてきたこととして,ICF活用については,まずその概念枠組みの活用は,子どもの実態を多面的・総合的に見ること,特に参加の視点から考えられることが特徴であり,そのことを踏まえて目標設定することに寄与できるものとされました。分類項目の活用については,見落としなく,多面的に状態を把握することに寄与できるものとされました。  合理的配慮については,「スタートラインを揃えるための配慮」ということが共有され,合理的配慮の方向性としては,伸びゆく子どもの学びを奪わない,過保護にならない必要があり,これまでのものに加える配慮だけでなく,差し引く配慮もあり得ることが共有されました。  その一方で,議論が尽くせず,引き続き検討が必要であることも明らかになりました。 本大会では,これまでの到達点と課題を踏まえ,それぞれの検討経過報告を軸に議論を展開することを趣旨としています。 〔話題提供〕  徳永氏は,教育における合理的配慮において,合意形成に関わる研

特殊教育学会 自主シンポジウム報告2

日本特殊教育学会第55回大会の 『ICFと合理的配慮と特別支援教育(5)』をテーマにした自主シンポジウム報告の続きです。 報告1は、こちらをご覧ください。 特殊教育学会 自主シンポジウムの報告1 〔指定討論〕  齊藤は,はじめに,合理的配慮の分かりにくさ,特に特別支援教育においては,これまで行われていた特別な指導との区別の曖昧さがあることを述べました。そして,何のための合理的配慮か,つまり,合理的配慮によって,その子にとって何が始まるのかを大事にすべきであることを述べました。そのうちのひとつとして,「子どもの学び」としての発達の保障・発達の促進であるとしました。子どもが学ぶためのスタート地点に立ち「参加」することで様々な発達が相互作用的に促され,また,保障されること,配慮によって「参加」は可能になったが,ただ便利になっただけということにならないようにすることを述べました。ふたつ目として、本人の意思をどのように反映させるか、本人が参加をイメージして「こうなりたい」と思うようにすることを大事にしたいと述べました。 〔フロアから〕  合理的配慮に関しては、労働分野は目的がはっきりしているので、合意形成のプロセスにしてもわかりやすいことや、(教育分野では)過剰な配慮や過剰な負担について、どのように決めていくのかがわかりにくいこと、合理的配慮の申し入れに際し、本人が自分の能力を理解しておくことが必要ではないかということ、ICFをチェックリストとしてどのように活用していくのかをきちんと視野に入れておくこと、教育と労働にはそもそも違いがあり(労働は生産という目的、教育は生涯の中で学ぶ)、目的が違うこと、など活発な意見交換ができました。 〔おわりに〕 「事例の検討が必要だな」・・・・・・そう感じました。 この報告を読んだ皆様はどのようにお考えになりますか? 文責:ICF-CY JPN 齊藤博之