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11月, 2019の投稿を表示しています

2019年度日本特殊教育学会@広島大学 自主シンポジウムの報告(その3)

前回からの続きとして,今回は,フロアとの主なやりとり,最後のまとめを報告します. まず,フロアから,学齢期の子どもにおいてのICFコアセットを考えるときには,特に「参加と活動」において学習面に関した評価項目(分類項目)が多くなると考えられるが,インクルDBの実践事例とのマッピングをして,3観点11項目に不足している点がなかったかどうかについて,堺氏に対して質問がありました. 堺氏は,①3観点11項目に基づく実践事例との適合性を検討しているので,3観点11項目以外で何が不足しているかについては分からないこと,②何か他に合理的配慮について記述しているものがあって,それとの適合性を検討して得られたカテゴリーと今回得られたカテゴリーを比較することができれば,検討可能であり,インクルDBの他に基準となる合理的配慮ついて記述したものがあればよい,と応えられました. 続けてフロアから,コアセットは多変量解析などの手法を用いてできたものであるが,話題提供されたものをコアセットと呼んでよいかとの質問がありました. これに対し,司会者より,コアセットの位置付けや手続については,世界の動きも含めて堺氏が見てこられたことが述べられ,堺氏にコメントを求めました. 堺氏は,コアセットは,WHOによって厳密な手続きに基づいて開発されたもの,とされているので,私のコアセットはコアセットと呼ばないほうが良いのではないかという議論があったが,ICFカテゴリーの活用に関しては,コアセットを作成するということが大勢を占めていたので,コアセットという名称を使う流れできているが,今後検討したい旨,回答がありました. 最後に,司会者より,台風の中での参加と活発な議論に対して,謝辞が述べられ,今回は次のように論点を整理しながら進めたこともあり,全体の構造が分かりやすく,議論の整理ができたことが述べられました. ・ICFの全体がどのようになっていて,それらのどこに着目しているか, ・どのように使おうとしているか, ・合理的配慮をどう捉えているか, ・どのような手続を踏んでいるか 今回の議論を踏まえ,課題を整理して,さらに検討を深めたいことが確認されました. 〈以上 運営スタッフ代表 徳永)

2019年度日本特殊教育学会@広島大学 自主シンポジウムの報告(その2)

前回の続きとして,指定討論者と話題提供者とのやりとりを報告します. 西村氏に対しては,長期ケアのためのICFコアセットにあわせて実施すると良い手続き等について質問がありました.西村氏からは,評価を進めるに当たって,病院側と連携し,医師やOT等,それぞれの専門の立場のから評価を取り入れつつ,個々の子どもに対する評価を関係者が共に行うこととしている,と応えられました. 逵氏に対しては,①合理的配慮提供を進めるために ICFを活用できるプロセス,及び②児童生徒を取り巻く環境の変化が激しい中で本人の活動と参加を支えるために貢献できるICFの活用方法,についてそれぞれ質問がありました.逵氏からは,まず,進路選択で受験をする場合,障害があることで不利にならないように合理的配慮を求められるようになってきており,その際にICFを活用することに効果があることが多く実証されていていることが応えられました.続けて,学校では概念図を活用する場合が多いことから,個別の指導計画や支援計画に活用したり,他職種間の理解で活用したり,進路を考える上で活用したりする中で,支援を考える際に,ICFの環境因子の促進因子と阻害因子が貢献できる,と応えられました. 堺氏に対しては,国立特別支援教育総合研究所のインクルーシブ教育システム構築データベース(以下,インクルDB)が教育という文脈の中で実際に提供された合理的配慮,個別の支援が収集されたものと理解した場合,今回導かれたコアセットに対応する基礎的環境整備の共通点があるかどうか,併せて 教育という文脈の中でICFコアセットでは語りにくいものはあるかどうかについて質問がありました.堺氏からは,まず,インクルDBの内容は,合理的配慮という前提で行われており,例えば「エアコンを設置している」は基礎的環境整備であることも考えられるので,配慮の内容によっては,基礎的環境整備との共通点はあるかもしれないことが応えられました.次に,合理的配慮が個々の場面における障害者個人のニーズに応じたものであることを考えれば,コアなものとして抽出されたこと以外のところに合理的配慮はあるのかもしれない,と応えられました. 今回はここまでです.次回はフロアとのやりとり,最後のまとめを報告します.

2019年度日本特殊教育学会@広島大学 自主シンポジウムの報告(その1)

台風接近で開催が危ぶまれた2019年9月23日,広島大学で日本特殊教育学会第57回大会が行われました. その中で,ICF-CY Japan Networkのメンバーがかかわり,「ICFと合理的配慮と特別支援教育(7)」と題した自主シンポジウムを行いました. その概要を3回に分けて報告します. まず,関係者は以下の通りです. 企画者・司会者:徳永亜希雄(横浜国立大学) 話題提供者:逵直美氏(東京都立光明学園),西村修一氏(前・栃木県立岡本特別支援学校),堺裕氏(帝京大学) 指定討論者:山元薫氏(静岡大学) 話題提供のテーマは,それぞれ次の通りでした. 「脳腫瘍ICFコアセット(試案)と合理的配慮」(西村氏) 「キャリア教育と合理的配慮の関係をICFの概念的枠組みの活用で考える」(逵氏) 「学校における合理的配慮ICF-CYコアセット作成の試み」(堺氏) これらの話題提供に続き,指定討論者の山元氏は,インクルーシブ教育システムの構築に向けた動き,特別支援教育における新学習指導要領改訂のポイントを概観した上で,話題提供者に対して,質問を行い,それぞれから応答が行われました. 詳細は,その2で報告します. (ICF-CY Japan Network 運営スタッフ代表 徳永亜希雄)