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11月, 2018の投稿を表示しています

平成30年度特殊教育学会ICF自主シンポ報告その4(フロアとのやりとり)

 前回に引き続き,今回は,フロアとのやりとりについてです.  時間内の全体でのやりとりに加え,終了後も個別にやりとりが多くありましたが,ここでは,時間内でのやりとりの概要を報告します.  最初の質問として,「他の国のICF活用の動向も参考になるのはないか」というものがありました. それに対し,徳永は「CFはそもそもWHOにおいて,ICDとも連動させながら保健関連情報を整理するための統計的ツールであり.世界的には,項目のセットであるコアセットの活用が増えてきた.私が紹介したポルトガルにおいても,項目のセットで子どもの状況を評価するために使われている.一方,日本では,概念図が重視されて紹介されてきたこともあり,概念図ベースの活用が多かったが.最近では,医療ベースでのコアセットも出てきた. これらを踏まえ,私達としてはICFの概念モデル活用と合理的配慮コアセットの組み合わせという,オリジナルの取組で,世界に発信できるものと考えている」と応えました.  次の質問として,「障害学生支援を担当しているが,特別支援教育での配慮と合理的配慮をどう整理しているか?そこにチェックリストはどう絡むか.」というものと「今回の合理的配慮の捉えは,権利条約をベースとしてものが,差別解消法をベースとしたものか」とういうものが続けてありました.  これらに対して,まず徳永は「中教審報告,差別解消法,権利条約は,解釈や表記の違いはあるが,すべて1本で繋がっている.教育における配慮は,障害のある子どもと同様に,必要な学習活動にアクセスできるように整えることと捉えている.教育課程,支援計画,指導計画等を通して展開される配慮は既にあるが,その上でさらに必要となる,本人保護者からの表明,或いは教員側が捉えて打診,相談し,合意形成のもとで提供されるものが合理的配慮として捉えている.これらを踏まえ,堺氏のコアセットでは,合理的配慮検討時に使えるものであり,西村氏のコアセットは,最初の全体的アセスメントで両方に使おうとされていると理解したが,どうか?」と応えました.  続けて西村氏は,「申し出に基づく合理的配慮を踏まえ,チェックリスト(コアセット)を用いて個々の障害の状態等に応じた配慮の必要性を捉えるようにしている.・権利条約でも障害者差別解消法でもあらゆるものが社会的障壁になる.教育においては,合理的配慮は実際

平成30年度日本特殊教育学会自主シンポジウム報告その3(指定討論の様子)

前回に引き続き,今回は,指定討論の様子についてです.    山元氏は,インクルーシブ構築に向けた動きや,新学習指導要領の趣旨,改訂のポイント,基礎的環境整備と合理的配慮の関係等について述べた後,話題提供者3名に対して質問を行いました. まず,徳永に対しては「個別の指導計画や支援計画がある中で,合理的配慮について合意形成を図る際,ICFはどこで活用できるのか」を問いました. それに対し,徳永は「個別の指導計画等の中で学習上又は生活上の困難を捉える際でもICF関連図で捉えることができる.また,その活用の有無にかかわらず,指導計画等の作成後に発生した,合理的配慮が必要となる可能性のある新たな事案について,現況や配慮等を検討する際にICF関連図が活用できるのではないか.」と応えました. 次に,西村氏に対しては,「LDのある児童生徒の実態把握では,ICFのコアセットを用いるより,その他のアセスメントの方が,LDの指導をしている先生方にとってみると,分かりやすいのではないか?」と問いました. それに対して西村氏は「LDの指導に詳しい先生は,確かに諸検査の結果をもとに必要な手立て・配慮を容易に導くことができる.しかし,ICFコアセットを用いることにより,困難さの程度の把握や環境評価,環境との関連の中で構造的に困難の原因を把握し,必要な手立て・配慮を見出すことができると考えている.実行状況が高まれば,手立て・配慮の適切性も把握できる.」と応えました. 最後に,堺氏に対しては,「今回のコアセットは,教育という文脈の中で実績のある合理的配慮という点でとても価値があり,今後,合理的配慮を検討する学校にとって有効である.コアセットとバッテリーを組むとより効果的になるアセスメント等の方法はあるか?」と問いました. それに対し,堺氏は「コアセットは,文字通り核となる部分なので,病弱・身体虚弱に関係する分類項目をすべて網羅しているわけではなく,ICFの概念的枠組み(ICFモデル)を使って,その子の状況を位置づけて,周辺部分というかその子をみる上で不足している面について捉えることが必要である.コアセットに関する状況を先にICFの概念的枠組み(ICFモデル)の中に位置づけて,幹を作って,枝葉を作っていくようなやり方も考えられると思う.バッテリーを組むという表現をするとすれば,コアセットと概念的枠

平成30年度日本特殊教育学会自主シンポジウムの報告その2(話題提供の様子)

間に厚労省シンポの話題を挟みましたたが,前々回の更新に引き続き,今回は,9月の特殊教育学会自主シンポでの話題提供内容について報告します.   話題提供は3人が行いました.その内容は次のとおりです. 徳永は,「これまでの検討経過と今後の方向性」と題して,取り組んできた本学会自主シンポジウム等を通して合理的配慮決定時の合意形成プロセスについての検討経過を報告し,昨年度の隈田原氏が報告した事例をもとに「合理的配慮決定手順(試案)」の作成の検討状況を報告しました.この中では,「合理的配慮の決定・提供・評価・見直し・引き継ぎ等の流れについての論点整理」として,ICF及びICF-CYの分類項目のセットである.いわゆるコアセットの位置付けや「ICF関連図」の活用の仕方等について投げかけを行いました. 西村氏は,「合理的配慮と新学習指導要領」と題して,まず特別支援学校新教育要領・学習指導要領解説自立活動編に記載された「合理的配慮と自立活動とのかかわり」について,セルフアドボカシースキルの獲得を目指す教育内容の重要性や,合理的配慮と自立活動の関係性の理解へのICFモデルの活用等について述べました.次に,LD児を例にしながらICFコアセットの活用可能性について報告しました. 堺氏は,「障害種別の合理的配慮ICF-CYコアセット作成の試み」と題し,国立特別支援教育総合研究所による教育システム構築支援データベースの病弱児の実践事例を用いて,ICF-CYカテゴリーとの適合性を検討し,合理的配慮ICF-CYコアセットの作成の試みを報告しました.今回の取組を通して,今後,学校における合理的配慮の各観点にあった障害種別の合理的配慮ICF-CYコアセットを作成できる可能性が示唆されたことやICFコアセットに倣って,記録用フォームを作成する必要性について述べました. 話題提供内容は,ここまでです.次回は,指定討論の様子について報告します.           (ICF-CY Japan Network 運営スタッフ代表 徳永亜希雄)