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平成30年度特殊教育学会ICF自主シンポ報告その4(フロアとのやりとり)

 前回に引き続き,今回は,フロアとのやりとりについてです.
 時間内の全体でのやりとりに加え,終了後も個別にやりとりが多くありましたが,ここでは,時間内でのやりとりの概要を報告します.
 最初の質問として,「他の国のICF活用の動向も参考になるのはないか」というものがありました.
それに対し,徳永は「CFはそもそもWHOにおいて,ICDとも連動させながら保健関連情報を整理するための統計的ツールであり.世界的には,項目のセットであるコアセットの活用が増えてきた.私が紹介したポルトガルにおいても,項目のセットで子どもの状況を評価するために使われている.一方,日本では,概念図が重視されて紹介されてきたこともあり,概念図ベースの活用が多かったが.最近では,医療ベースでのコアセットも出てきた.
これらを踏まえ,私達としてはICFの概念モデル活用と合理的配慮コアセットの組み合わせという,オリジナルの取組で,世界に発信できるものと考えている」と応えました.
 次の質問として,「障害学生支援を担当しているが,特別支援教育での配慮と合理的配慮をどう整理しているか?そこにチェックリストはどう絡むか.」というものと「今回の合理的配慮の捉えは,権利条約をベースとしてものが,差別解消法をベースとしたものか」とういうものが続けてありました.
 これらに対して,まず徳永は「中教審報告,差別解消法,権利条約は,解釈や表記の違いはあるが,すべて1本で繋がっている.教育における配慮は,障害のある子どもと同様に,必要な学習活動にアクセスできるように整えることと捉えている.教育課程,支援計画,指導計画等を通して展開される配慮は既にあるが,その上でさらに必要となる,本人保護者からの表明,或いは教員側が捉えて打診,相談し,合意形成のもとで提供されるものが合理的配慮として捉えている.これらを踏まえ,堺氏のコアセットでは,合理的配慮検討時に使えるものであり,西村氏のコアセットは,最初の全体的アセスメントで両方に使おうとされていると理解したが,どうか?」と応えました.
 続けて西村氏は,「申し出に基づく合理的配慮を踏まえ,チェックリスト(コアセット)を用いて個々の障害の状態等に応じた配慮の必要性を捉えるようにしている.・権利条約でも障害者差別解消法でもあらゆるものが社会的障壁になる.教育においては,合理的配慮は実際には通常の学校や特別支援学校等の既存の環境を下に提供される「固さ」があり,予算も少ない.」と応えました
 終了後にも,支援計画での表記とそこでの合理的配慮の捉え方,学校現場での生かし方,虐待ケースでの意思表示の捉え方等,多くの質問と協議を行いましたが,ここでは割愛いたします.

 以上,4回に渡り,平成30年度日本特殊教育学会自主シンポジウムの報告をさせていただきました.
 今回,次に踏み出すヒントが多く得られたように感じています.引きつづき,どうぞよろしくお願いいたします.

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