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2019年度日本特殊教育学会@広島大学 自主シンポジウムの報告(その2)

前回の続きとして,指定討論者と話題提供者とのやりとりを報告します.

西村氏に対しては,長期ケアのためのICFコアセットにあわせて実施すると良い手続き等について質問がありました.西村氏からは,評価を進めるに当たって,病院側と連携し,医師やOT等,それぞれの専門の立場のから評価を取り入れつつ,個々の子どもに対する評価を関係者が共に行うこととしている,と応えられました.

逵氏に対しては,①合理的配慮提供を進めるために ICFを活用できるプロセス,及び②児童生徒を取り巻く環境の変化が激しい中で本人の活動と参加を支えるために貢献できるICFの活用方法,についてそれぞれ質問がありました.逵氏からは,まず,進路選択で受験をする場合,障害があることで不利にならないように合理的配慮を求められるようになってきており,その際にICFを活用することに効果があることが多く実証されていていることが応えられました.続けて,学校では概念図を活用する場合が多いことから,個別の指導計画や支援計画に活用したり,他職種間の理解で活用したり,進路を考える上で活用したりする中で,支援を考える際に,ICFの環境因子の促進因子と阻害因子が貢献できる,と応えられました.

堺氏に対しては,国立特別支援教育総合研究所のインクルーシブ教育システム構築データベース(以下,インクルDB)が教育という文脈の中で実際に提供された合理的配慮,個別の支援が収集されたものと理解した場合,今回導かれたコアセットに対応する基礎的環境整備の共通点があるかどうか,併せて 教育という文脈の中でICFコアセットでは語りにくいものはあるかどうかについて質問がありました.堺氏からは,まず,インクルDBの内容は,合理的配慮という前提で行われており,例えば「エアコンを設置している」は基礎的環境整備であることも考えられるので,配慮の内容によっては,基礎的環境整備との共通点はあるかもしれないことが応えられました.次に,合理的配慮が個々の場面における障害者個人のニーズに応じたものであることを考えれば,コアなものとして抽出されたこと以外のところに合理的配慮はあるのかもしれない,と応えられました.

今回はここまでです.次回はフロアとのやりとり,最後のまとめを報告します.

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