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ICFって何でしょうか?

「知りたいICF、教えてICF-CY」1

2002年7月にICFの日本語公定訳が出され、同年12月には、政府が定めた『障害者基本計画』(2003~2012年度)では『基本的な方針』の『横断的視点』で、『WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)については、障害の理解や適切な施策推進等の観点からその活用方策を検討する。』と述べられています。」

以降、いろいろな分野で活用が図られてきました。 

 例えば、障害のある子どもへの教育である「特別支援教育」の分野では、今後の学習指導要領等の改善の方向性について提言した、2008年1月の中央教育審議会(答申)において、特別支援学校の教育課程の改善のために、ICFの考え方を踏まえる必要性を指摘しています。

さて、あらためてICFとは一体どのようなことだろう?と調べるためにいわゆる「赤本」をはじめ、関連の文献*1)等の本を見てみると、次のような説明がなされています。

「ICF(国際生活機能分類)は、2001年にWHOより発行された、健康状態と健康関連状況を記述するための統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することを目的としている分類であり、すべての人の健康状態を全人的に把握するためのものとして開発されたもの。」これで分かるという方もいると思いますが、よく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか!?

そこで、もう少しイメージしやすいように補足説明をします。

ICF(国際生活機能分類)は、2001年にWHO(世界保健機関)の総会においてICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps;国際障害分類)の改訂版として採択されたものです*2)。ICFでは、人間の健康状態に関係した生活機能の状態を、心身機能・身体構造のレベル、活動のレベル、参加のレベルに分け、さらに、その人をとりまく社会制度や社会資源等の環境因子、障害とは直接関係ないとされる個人の因子、健康状態も含めた、それら相互作用の中でとらえるものです。その概念的枠組みを示したものが図1です。また、ICFでは、心身機能、身体構造、活動、参加、環境因子について、アルファベットと数字の組み合わせた分類項目合計1424項目が挙げられています(例 d450歩行 等)。 

ICFの構成要素間の相互作用の図

 図1 ICFの構成要素間の相互作用

 さらにICFに対しては、保健・医療・福祉などの多種にわたるサービスがある中でそのサービス機関の専門家だけでなく、本人はもちろん家族も含めたみんなが、健康に関連する状況や障害の状態について共通理解するために役立つものとして活用されることが望まれています。

ICFの活用によって期待できることとして、前述の文献では以下の3点が挙げられています。
・障害や疾病を持った人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の従事者が、ICFを用い   

ることにより、障害や疾病の状態についての共通理解を持つことができる。

・ 様々な障害者に向けたサービスを提供する施設や機関などで行われるサービスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供することができる。

・ 障害者に関する様々な調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを提供することができる。

以上、ここまでを受けてあらためていえることは、ICFは、すべての人の健康にかかわる生活の状況を全人的に表すためのものとして開発されたものであり、何らかの支援を必要とする人へのサービスが効果的に行われるための手段の一つになりうるものであるということでしょうか。

以上がICFについての説明です。皆さんのご理解の一助となれば幸いです。

 *1)ICF 国際生活機能分類―国際障害分類改訂版(世界保健機関;WHO、中央法規、2002、

「ICF及びICF-CYの活用 試みから実践へ 特別支援教育を中心に」(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所、ジアース教育新社、2007)

「生活機能分類の活用に向けて」(厚生労働省大臣官房統計情報部、財団法人 厚生統計協会」 

*2)ICIDHやその改訂については、あらためて項目を起こします。お楽しみに!

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