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第47回 日本特殊教育学会参加報告

9月に宇都宮大学で特殊教育学会が開催されました。ICF/ICF-CYに関連した自主シンポジウム、学会準備委員会企画シンポジウム、ポスター発表が行われましたが、ここでは、自主シンポジウムのことについて報告します。

自主シンポ  ICFの学校現場への適用 Ⅵ
    ―あらためて、特別支援教育においてICF-CYを活用する背景に迫るー
企画者・司会者 徳永亜希雄(独立行政法人特別支援教育総合研究所)
        松村 勘由(独立行政法人特別支援教育総合研究所)
話題提供者   徳永亜希雄(独立行政法人特別支援教育総合研究所)
        松村 勘由(独立行政法人特別支援教育総合研究所)
        齊藤 博之(山形県立上山高等養護学校)
        田添 敦孝(東京都立墨東特別支援学校)
        川口 ときわ(静岡県立中央特別支援学校)
指定討論者   島  治伸(徳島文理大学)

本テーマ「ICFと学校現場への適用」として、これまで5回の自主シンポジウムが行われてきました。
学習指導要領などにICFに関する記述がなされ、ICF-CYの日本語訳版が発行される等、今後の本格的なICF-CY活用が期待される中、意義深いシンポでした。

【話題提供から】
1 質的分析及び量的調査の結果から
質的分析としては、これまで特別支援教育の中でICF及びICF-CYを活用したことがある又は活用しようとしたことがある人へのグループインタビューを実施して得られた内容として、次のような報告が行われました。
 特別支援教育においては、①学校現場での解決すべき課題への認識、②参加者自身が賛同したICF/ICF-CYの特徴が活用の目的となるということや  ICF/ICF-CYの概念的枠組み(理念)としての側面とツールとしての側面は、実践上は両輪且つ不可分なものであるということが報告されました。
量的調査としては、全国の特別支援学校を対象にした調査において、回答校全体の約21%においてICF/ICF-CYが活用されていることなどが報告されました。
2 よりよく子どもを理解するために
 ICF/ICF-CYの概念的な枠組みで子どもを見ることにより、問題やできないことばかりに目を向けるのではなく、子どもの生活機能に目を向け、環境を含めて多面的・総合的な捉えが可能になるということが実践事例を通して報告されました。
 またICF/ICF-CYの項目の利用により、子どもの状態像を的確に把握できる上に、関係者間で共通言語としての可能性も広がるということも報告されました。
3 学校経営上の課題改善のために
 まず、特別支援学校の現状として、専門性を組織的に向上させることが求められている一方で、子どもたちの将来を見通した一貫性のある指導は、現状では難しいと考えが報告されました。次に、ICF/ICF-CYを手段として活用することで、すべての児童生徒の自立と社会参加に向けた参加の姿の見出し方と関係者間の連携で一貫した指導の実現を目指したいということが報告されました。
4 子どもの生活の適切な支援のために
  特別支援学校の寄宿舎では、子どもの適切な支援が求められる中、指導員間や関係者間での共通理解の弱さなどの課題があるという考えのもと、その解決のために学校独自のICF関連図やコードセットを中心に、ICF-CYを活用した取組が報告されました。
 卒業後の生活を視野に入れ、実態把握・課題設定・指導につながる可能性を見いだした実践でした。

【指定討論~特別支援教育におけるICF/ICF-CY活用の意義】
 ICF/ICF-CYは、生活機能と障害を全人的に把握するために生まれたものであり、特別支援教育における個別の教育支援計画の作成において関係者や関係機関同士での共通言語としても十分に活用できるということなどが述べられました。
今回の自主シンポジウムでの議論において、特に質的分析は大変興味深い内容でした。学校現場でICF/ICF-CYのどの部分に共感し活用されているか、いないか等、大切にしたい視点が含まれていました。
 ICF/ICF-CYは,誰のものでもなく、みんなのもの…子どもたちの未来をつなぐため活用の方策を探り、教育実践に活かしていきたいものです。
                                 
               (文責 理解啓発グループ 逵 直美)

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