2010年1月24日、東京にて「生活機能分類の活用に向けて-共通言語としてのICFの教育・普及を目指して-」と題した厚生労働省主催のシンポジウムが開かれました。本シンポジウムは、定員300名ほどのホールで開催されましたが、ほとんど会場が埋まるような状況で、熱気が感じられました。当日の資料と参加者アンケートの結果は以下のURLにアップされています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/s0217-10.html
ここでは、全体の流れに沿ってその概要について紹介します。
1.WHOからのビデオレター
WHO分類・ターミノロジー・標準コーディネーターのベデルハン・ウースタン氏らからのビデオレターがあり、その中では、日本では、ICF/ICF-CYの日本語版が用意され保健・社会・教育の分野での開発のための活動がされており、WHOにとっても心強いというお話がありました。そこでは、ICF-CY Japan Networkのメンバーが深く関わってつくられたジアース教育新社の2冊の本が机上に置かれてありびっくりしました。その後のお話から、日本の高齢化社会でのICF普及への可能性に期待されていることを感じました。
2.講演
4名の方から以下のような講演がありました。
(1) 一般社団法人 日本介護支援専門員協会会長 木村隆次氏
「新予防給付におけるアセスメント・ケアプラン作成の考え方」
「介護予防のアセスメントシート」へICF活用を柱に、ケアマネジメントの実際の動きの中での評価等について、韓国の話も引き合いに出しながら述べられました。
(2)千葉大学医学部附属病院地域医療連携部准教授 藤田 伸輔氏
「退院支援におけるICF評価の試み」
在院日数が短縮されている中で、生活支援の視点からの情報共有のために、ICFのよる総合的な評価の可能性等について述べられました。
(3)国立精神・神経センター病院副院長 安西 信雄氏
「精神障害領域におけるICFの活用に向けて」
精神障害領域における活用について、ICFの枠組みを使ったアセスメントシートやケーススタディ、包括評価、治療計画などに活かされている実践例が紹介され、精神障害のある人の特性をいかしたコアセットを抽出してICFの評価項目に組み入れる方向での検討等について述べられました。
(4)国立長寿医療センター研究所生活機能賦活研究部長 大川 弥生氏
「ICFの活用『生きることの全体像』についての『共通言語』として」
大川氏からは、予定された内容の前に、時間を割いて、ICFとはどういうもののなのかということについて述べられました。その中では、ICFの活用の原則として、活用の仕方としては大きく2つの側面があり①生活機能モデルの活用:総合的・相互作用的モデルとして②分類そのものの活用:項目の活用と評価点の活用その両側面を含んだ総合的な活用であるべき、等について述べられました。
3.パネルディスカッション
指定討論として、2名の方からお話がありました。
(1)新潟医療福祉大学医療技術学部教授 真柄 彰氏
「保健医療福祉連携教育からみたICFの利用状況」
まず、医療現場におけるICFの利用状況についての印象について述べられた後、リハビリテーション医師の認識、研究領域でのICFの利用状況、教育現場でのICFについてそれぞれ述べ、最後に今後への期待について述べられました。
(2)郡山市医療介護病院保健福祉等事業推進室長 島野 光正氏
「ソーシャルワーカーの視点とICF」
具体的な事例を通して ニーズとデマンズについての考え方等も交えながら、生活の悪循環から好循環へ移行のための参加の捉え直し等、ICFの視点の活用について述べられました。
その後、座長である、日本社会事業大学学長 社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会委員長 大橋謙策氏の司会のもと、講演者4人も交えて活発な議論が交わされました。
今回のシンポジウムでは、ICFの普及の可能性、利用に於ける課題や問題点を明らかにするため、介護、リハビリテーション、医療連携等における具体的な研究や、活用事例の報告が行われました。今後、このシンポジウムでの活用事例の報告発表等を通じ、ICFに関する異職種間の情報交換が活発化し、連携が促進されることが期待されます。
(逵 直美)
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